第3回 W杯と少年サッカー(2)(Text by 鈴木哲夫)
「UEFAチャンピオンズリーグとワールドカップ、どちらが面白い?」という質問にあなただったらどう答えますか? あるいはちょっと質問を変えて「世界で一番面白いサッカーって何だと思う?」でも良いかもしれません。「勿論、ワールドカップだよ!」と躊躇なく答えられる人は実は幸せな人なのかもしれません。昨今のサッカー事情を多少なりとも知っていて、それなりにサッ カーを見ている人にとって、その技術的レベルでの面白さは、国を代表した世界No.1を決める試合である「W杯」よりも、(欧州の)クラブNo.1を決め るチャンピオンズリーグのほうが上である事は(あまりマスコミでは喧伝されませんが)周知の事実です。

90年イタリアW杯の決勝は論外にしても、94年アメリカ、98年フランス大会の決勝より、99年のマンチェスターUの劇的な優勝のほうが試合としては面白かった、という感想に異論を挟む人はそう多くないと思うのです。別にコアなサッカーファンを気取る気は毛頭ないのですが、実は純粋に「サッカーの技術の進歩」や「技術的感動」を味わうためには、「代表」の試合ではなく 「クラブ」の試合のほうが見るべきところが多いという状況に(特に欧州では)なっているのが事実なのです・・・。

でも、やはり「W杯」は面白い!へたくそであっても弱くても、やはり「日本代表」は応援してしまう。だから何だ!文句あるか!!!・・・この意見、実は私 としてはすごく賛同してしまうのです(笑)。技術的云々なんて関係ない!「おらが代表」が頑張っているんじゃないか!! 解ったような口利くんじゃね え!!・・・94年まではW杯は見るものであったのですが、自国の代表が出てみると(・・・と、言っても1回しかありませんが(^^ゞ)、やはり「日本代 表」を純粋に応援している自分がいたりするのです。

W杯を「国と国との誇りを賭けた戦いである」という人がいます。たかが1スポーツに「国の誇り」もあったもんではないのですが、実際には「国の代表(= 我々の代表)」として戦っている代表チームに自分自身を重ね合わせて(同化して)、それこそ一喜一憂しながら熱烈応援したりしているのです。 「ナショナリズム」という言葉は今の日本ではあまり良いニュアンスで使われませんが、良い意味でのナショナリズムの発露がこの「W杯」に代表される、「国の代表(=我々の代表、さらに言えば「自分の分身」)の戦い」なのかもしれません。

で、サッカーに限らずだと思うのですが、こういった「自分の分身」に対する一種の同化による入れ込みや思い込みというのは、その対象物が身近であればあるほど、強烈になる傾向があります。
例えばオリンピックなどは「日本人である」、というだけで予選を突破できるかできないか、というレベルの選手に熱い応援を送ったりしますし、夏の高校野球 などは地元の高校が出たというだけで大騒ぎです。地元のチームが出ていなくても「どうせ応援するなら神奈川県(関東地方)のチームかなぁ・・・」なんて言 う変な地元意識が出てくるのはこの良い例でしょう。

話をサッカーに戻すと、例えば浦和レッズがどんなに弱くてもずっと応援し続ける人達にとって、レッズが技術的に良いサッカーをしているか/していないかな んて全然問題ではなくて、レッズが好きだから、自分の身内として(自分の代わりに)頑張っているから、結果はともかく応援し続けるんだ!という部分は絶対 にあると思うのです。

どんな試合であっても、そのチームに対する「同化」が大きければ大きい程、「感動」は大きくなります。評論家が何と言おうが、順位がどうであろうが、技術 的レベルがどうであろうがそんな事はきっと関係ないのです。オラのチームが一番!・・・これは多分、そういった人達にとって絶対の真実なのです。

・・・そして、その「同化」レベルの最高のものが、実は「自分の子供(子供達)」だと私は考えています。

考えてみて下さい。ジダンやリバウドの華麗なプレーより、自分の子供のへなちょこシュートでの1点のほうががどんなどんなに嬉しいことか!フランス代表が 98年W杯、EURO2000で連続優勝したことより、自分の子供のチームが練習試合で連勝したほうがよっぽど嬉しいのです! あるいはカーンのスーパー セーブより金本君(3年)や清水君(6年)のPK戦でのゴールキーピングのほうがどんなに感動することか・・・。

・・・まさに文字通り自分の分身である「子供」が、一所懸命頑張っている姿にW杯以上の感動を覚えてしまうというのは、当然といえば当然のことなのです。

2002年、日本と韓国でW杯が開催されます。でも、その4年に一度の世界のお祭り以前に、我々の目の前にはそういった日々感動を与えてくれる子供達がいます。 「世界で一番面白いサッカー」。それは、JリーグでもセリエAでもW杯でもチャンピオンズリーグでもなく、我々の子供達のが与えてくれるものなのだと私は思っています。

・・・信じられない人は評論家としてではなく(笑)、純粋に自分の子供を応援する親として自分の子供の試合を見て、そして応援してみて下さい。きっとサッ カーを見る目が変わると思います。そしてそれは子供が少年サッカーをやっている時に親に与えられた、二度とないの至福の時なのです。子供達の試合を見なが ら、是非「世界で一番面白いサッカー」を味わってみて下さい。きっとW杯の予選のような「ハラハラ」「ドキドキ」「ワクワク」そして「イライラ (^◇^;)」の素晴らしい時間が過ごせること請け合いです。

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